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〜 翌朝
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山田さんは、昨日の父親の発言の真意を尋ねます。
父親は子供の頃から怖い存在でしたが、奥さんの花子さんに相談した手前、何も尋ねないわけにはいきません。
山田 なあ、親父。昨日のことやけど...
父親 昨日のことって、何や? 仕事探しに行く気になったってことか?
山田 いや、そうやない。
昨日もいうたけど、今どき、ロクな所もない。
そやから、というのは変かも知らんけど、
この店でがんばっていこうと思ってるんや。
父親 そうか... ほな、これをちょっと見てみい。
山田 何や、これ?
父親がしばらく悩んだ後取り出したのは、税理士事務所から届いたばかりの月次の決算書でした。
山田 4月は売上が430万で、20万の黒字か。 最近、お客さんも減ってるしな。 えーと、こっちは1月からの累計か....
売上が1800万で120万の黒字と。
ウチの数字を初めて見たけど、
これが、どないかしたんか?
父親 お前は、こういうのは苦手みたいやな。
山田 苦手っていうか...営業やったしな。 売上と利益くらいはわかるけど。
父親 今晩、花子さんと2人でじっくり見てくれ。 話はそれからにしよ。
父親はそういって、自分の部屋からいくつかの帳簿や書類を山田さんに手渡しました。
山田さんは、なぜ父親がそんなことをいうのかがわかりません。確かに利益は少ないのかもしれませんが、今の状況を考えたら、決して悪い業績だとは思えなかったのです。
そして夜。
山田さんは、妻の花子さんに、書類を見せました。
花子さんは、今はスーパーでレジを担当していますが、簿記2級の有資格者で、結婚するまでは会計事務所に勤務していました。
山田 どういうことか、わかるか?
花子 だいたいの感じはね。 そやけど、このままやったらアカンわ。
山田 アカンて、お前。
確かに大して儲かってへんけど、
赤字やないし...
花子 ...
棚卸がどうなっているんかがわからんけど、
ここに入ってない経費や義父さんらの生活費を
考えたら、悠長なことはいうてられん状況やで。
山田 どういうことや?
花子 カンタンにいうと、1月から4月までの合計で、
義父さんらの給料は120万円しかないってことや。
1ヶ月にしたら30万円やね。
で、銀行の返済が15万円あるから、残りは15万円。
これでは多分足りないと思うから、
その分は、貯金を解約してるっていうことや。
山田 儲かってるんと違うのか?
花子 給料のところを見てみ!
アンタの30万とパートさんの15万の合計45万が
毎月書いてあるやろ。
つまり、ここには義父さんの取り分はないねん。
法人やなくて個人やから、
義父さんの取り分は最後の利益になるんや。
山田 ほぅ....
毎月30万円か、俺と一緒やなあ。
花子 何、呑気なことをいうてんの!
ウチは私も働いているし、ローンもない。
そやけど、義父さんは銀行に毎月返済してはる。
15万円で生活するって、ムリやで。
山田 ...
花子 ここに入っていない経費もあるやろし、
去年の決算書を見ても悪いし...
義父さんがアンタに
他所で働け!といわはるのもわかるわ。
山田 つまり...アレか。
このままやったら俺の給料を減らさんとアカン
っていうことやな。
花子 それくらいで済んだらいいけど...
アンタの取り分を減らしたって、売上が落ちている
んやから、本質的な解決にはならへん。
先送りにするだけや...
山田 そしたら、どないしたらいいんや...
花子さんに教えてもらったお店の実態。まったく予想もしていなかった現実がそこにありました。
山田さんと花子さんは、夜遅くまで書類とにらめっこをして、これからどうしたらいいのかを相談しました。
そして次の夜、家族会議が行なわれました。
山田 お店の現状はだいたい呑み込めた。
他に働きに行け!という親父のコトバの意味も、
わからんことはない。
そやけど、俺はこの店をなんとかしたいと思う。
花子も賛成してくれてる。
父親 そうか...
そやけど、商売というのはお前が思っているほど
カンタンなもんやないぞ。
花子 義父さん、私らにやらせてください。
難しいのは充分承知してますけど、
ここで投げ出してしまったら、
きっと後悔すると思うんです。
山田 会社が潰れてから今まで、
正直いうてタダ飯を食わせてもうてた。
店に出てたら儲かるもんやとも思ってた。 今更やけど、それは反省している。 そやから、その分も含めてやらせて欲しい。
それで、どーしてもアカンかったら、
それはその時に考えるわ。
父親 わかった。
ワシもできるだけのことはするけど、
今の時代、お客さんの考えてることは、
正直いうて、もうひとつようわからん。 そやから、お前のやりたいようにやったらええ。
それから1年近くの間、山田さんはひたすら働きました。セミナーに参加したり、少しでも効果のありそうな書籍を何十冊も買い求めては、同じように実践してみました。
花子さんに手伝ってもらいながら、DMやチラシを使った特売セールを2回仕掛け、また陳列も数回変えてみました。
少しでもたくさん売ろうと、毎日考えられることを実践しました。
しかし、業績はさほど良くはなりません。
売上は少し増えたものの、売価を下げた分粗利率が悪くなったことと経費の増加により、結果的に利益は以前より少し悪くなりました。
山田さんは、父親の「商売はカンタンやない。」というコトバの重さを身に染みて実感させられています。そんなある日のことです。
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